mattyuuの数学ネタ集

世界は数式で溢れている

調和級数大好きカメさん後日談

この記事は、インテジャーズ Advent Calendar 2017 - Adventar 19日目の記事です。

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インテジャーズ Advent Calendar 2017 - Adventarの5日目の記事で調和級数大好きカメさんの話を書きました。今回はその後日談の紹介です。

まだ調和級数大好きカメさんをご存知ない方は前回の記事を先に読んでみてください。
mattyuu.hatenadiary.com

調和級数大好きカメさんからの相談

ある日、くまさんのところに毎日調和級数ライフを楽しんでいるはずのカメさんが深刻な顔をしてやってきました。

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調和級数大好きカメさん「く、くまさん、、じ、実は相談が、、、」

くまさん「な、なんだい!?」

調和級数大好きカメさん「じ、実は僕、、、そ、、そ、、」

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調和級数大好きカメさん素数が好きになったんだ。。」

なぜ素数が好きになったのか

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くまさん「な、なぜだい!?、、君はゆっくりでもどんどん大きくなる調和級数に自分を重ね合わせてシンパシーを感じていたはずだろ??」

調和級数大好きカメさん「そ、素数にシンパシーを感じるんだよ。。」

くまさん「な、なぜだい!?君は素数とは似ても似つかないよ。。」

調和級数大好きカメさん「そ、素数はその逆数和が発散するんだ。素数分の1も足していけばいつかどんな大きくなるんだよ。インテジャーズに書いてあったんだ。」

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integers.hatenablog.com

調和級数大好きカメさん「調和級数よりゆっくりだけど、無限に大きくなる。そんな素数にシンパシーを感じるんだよ。」

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再び給水ポイントを

調和級数大好きカメさん「だからお願い、もう一度数直線上の整数に給水ポイントを設置してくれないか?」

くまさん「わ、わかったよ。」

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くまさん「設置したよ。でも本当に大丈夫かい?」

調和級数大好きカメさん「ありがとう!調和級数と一緒で、順番を並び替えたらきっと給水ポイントに止まれるよ!」

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整数1にたどり着けない

調和級数大好きカメさんは、数直線上で0を出発点とし、素数分の1の歩幅で歩き始めました。次の一歩が整数を超えてしまう時は、その歩幅は歩まずにそれより小さく、かつ整数を超えない素数分の1の歩幅で歩くのです。しかし、たった6歩歩いたところで行き詰まりました。6歩目に歩いた歩幅は1/654149です。次の一歩は654149より大きい素数の逆数にする必要がありますが、調和級数大好きカメさんはにわか素数ファンのため、大きい素数をほとんど知らなかったのです。次の一歩の計算に時間がかかり、なかなか一歩を踏み出せません。

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カメさんはリスタートということで、出発点に戻り、様々な素数分の1の歩幅で歩きますが、どうしても1にぴったり止まることができませんでした。。

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素数の逆数和はどんなに並び替えても整数にならない

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くまさん「調和級数大好きカメさん、、、僕は気づいてしまったよ。どんなに歩幅を入れ替えても君はただ一つの整数にすらぴったりたどり着くことはできないんだよ」

調和級数大好きカメさん「そ、そんなーー(T T)」

<証明>
p_1p_2\cdotsp_nを相異なるn個の素数とします。p_ii番目の素数という意味合いではないので、p_1=2p_2=3とは限りません。

今、ある整数Nが存在して、
\frac{1}{p_1}+\frac{1}{p_2}+\cdots +\frac{1}{p_n}=N
となったと仮定すると、
両辺にp_2p_3\cdots p_nを掛けることで、
\frac{p_2p_3\cdots p_n}{p_1}+p_3\cdots p_n+\cdots +p_2p_3\cdots p_{n-1}=p_2p_3\cdots p_nN
となり、左辺の第1項は整数でない有理数、それ以外の項は全て整数となり、矛盾します。
よって、仮定を満たすような整数Nは存在しません。

やっぱり調和級数が大好き

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調和級数大好きカメさん「くまさん、今回もいろいろありがとう。やっぱり僕には素数はまだ早かったよ。」

くまさん「そうだよね。素数の道は険しいよ。一緒に一歩一歩勉強していこう!」

調和級数大好きカメさん「そうしよう!」

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